頭痛の診断では、しばしばMRIでの検査が行われます。また、CT検査も同じように頭部診断で大切なものです。しかし、頭痛を診断する上で、MRIとCTの検査の違いについてはあまり知られていません。
今回は、MRIやCTについて、それぞれの特徴や違いをご説明します。
頭痛の診断では、しばしばMRIでの検査が行われます。また、CT検査も同じように頭部診断で大切なものです。しかし、頭痛を診断する上で、MRIとCTの検査の違いについてはあまり知られていません。
今回は、MRIやCTについて、それぞれの特徴や違いをご説明します。
MRIとCTの違いを知るために、まずはMRIについて知っておきましょう。「MRIとはどのような検査方法なのか」「MRI検査で頭痛のなにが分かるのか」を理解しておくことで、あなたに適した検査かどうかが分かります。
まず、そもそもMRIとはなんなのか、についてご説明します。
MRIとは、強力な磁力を利用して、体内を撮影するための機械のことです。磁気の持つ共鳴する性質を応用して、臓器や脳、手足の関節の内部をうつしだします。体内をうつしだしたものをコンピューターが解析して画像をつくるので、写真をみるように身体のなかの状態を把握できます。
人間の身体は70%は水分でできています。血液や臓器、脳、手足の組織などを形作る細胞のほとんどは水分でできています。この水分にMRIは強力な磁気を当てて、共鳴したところを読み取ります。反対に、水分の少ない組織である骨や肺のなかにある空気といった水分の少ないところは磁気を当ててもほとんど共鳴しません。
MRIは、この磁気への共鳴の差を利用して解析し、画像としてうつしだすのです。
水分量が多く時期が共鳴する箇所は白くうつしだされ、高信号域と呼ばれます、一方で、水分量の少ない箇所は黒くうつしだされ、低信号域となります。
画像のうつしだしかたの設定はいろいろと調整することができますが、MRIは基本的にこのような原理です。
MRIとCTの最大の違いは、その画像の撮影原理です。MRIは先ほどご説明したとおり磁気を応用したものですが、CTは放射線の一種であるX線を利用します。
X線はとても細かい粒のようなもので、その小ささは身体を通り抜けられるほどです。この性質を利用して、体内の状態を画像としてうつしだします。
体内の組織によって「X線が通過するもの」と「X線が通過しにくいもの」の差で画像にうつしだします。CTでは、X線が通過しにくいものほどはっきりとうつるため、骨や肺などがはっきりとうつしだされやすくなっています。
「体内をうつしだす」という目的ではMRIとCTは同じようなものとして捉えられがちですが、それぞれの撮影原理は全くちがうものです。それでは、頭痛のための頭部診断では、MRIとCTにどのような違いがあるのでしょうか。
もちろんMRIやCTの機器そのものの性能にも左右されますが、一般的には上記のような違いがあります。
CTとMRIの特に大きな違いは、「撮影時間」「得られる情報量」「被ばくするか」の3つです。
まず、一つ目の違いに撮影時間が挙げられます。MRIはCTよりも数倍時間がかかってしまうのが特徴です。これにより、一刻も早い処置が求められる脳出血などが疑われた場合は、CT検査を優先して受けることになります。反対に、じっくりと頭部を調べられる状況では、MRI検査を受けることが多いです。
また、頭部撮影で得られる情報量にも違いがあります。CTは、脳のなかの特に底部(首の近く)の辺りを撮影することが苦手です。この辺りは骨が入り組んでいて、X線が通りにくため、画像がぼやけてしまうのです。一方で、MRIは骨に干渉されないため、脳の底部の腫瘍なども発見することができます。さらに、脳梗塞超急性期の診断には圧倒的にMRIが優れており、CTでは見落としてしまいがちです。それと脳血管(動脈や静脈)の状態を観察するのも、CTでは造影剤を用いなければなりませんが、MRIは造影剤を用いる必要はなくしたがってアレルギーなどの問題がありません。
放射線被ばくについても違いが挙げられます。MRI検査は磁気の力を利用するものなので、当然のことながら被ばくの心配はありません。
しかし、CT検査で使われるX線は放射線の一種なので、検査時に被ばくしてしまうことになります。検査で浴びることになる放射線量は健康に害のないレベルですが、海外では子どもにCT検査を行うことを避ける動きがあります。
確かにCT検査は撮影時間が短いためじっとしておれない子どもには使われがちですが、放射線被ばくの点からは子どもに対するCT検査は必要最小限にすべきです。
MRIとCTは得意とする診断や病気などが違います。しかし、こと頭痛の診断にはMRI検査の方がCT検査より得られる情報量の違いや、放射線被ばくをしないという点から優れていると思われます。
MRI検査は、身体のなかの状態を確かめたり病気の進行の程度を確認するための一般的な検査方法です。そして、頭痛の検査の際にも、MRI検査はしばしば行われます。
頭痛の種類はたくさんあります。一つは服薬や生活習慣の改善など、定期的な通院や日常生活の範囲のなかで対応できる頭痛(慢性頭痛)です。この慢性頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などの一般的な頭痛です。これらの頭痛の名前を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
もう一方の頭痛は、危険な頭痛と呼ばれるものです。この危険な頭痛は、発症からすぐに治療を開始する必要があります。なかには一刻を争うような頭痛も含まれています。
そして、MRI検査で診断できる頭痛は、危険な頭痛です。一方で慢性頭痛でもこの危険な頭痛ではないと除外するためMRI検査は行われます。今回は、危険な頭痛の発作が起きた際に、MRI検査を受けるメリットとデメリットを解説します。
頭痛診断でMRI検査を受けることで得られるメリットとデメリットとはなんなのでしょうか。
頭痛で受診する際にMRI検査を受けるケースは一般的です。あなたも受診の際に、MRI検査を受けるかどうか問われることも十分に考えられます。そんな時に困らないよう、MRI検査のメリットとデメリットを知っておきましょう。
頭痛の診断において、MRI検査を受けるメリットは大きく分けて2つ挙げられます。
まず、MRI検査を頭痛診断で受けることの最大のメリットは、頭部の情報を確実に得られる、ということです。
MRI検査は、頭部の診断でよく行われるCT検査と比較した場合、脳の画像が鮮明にうつります。細かい病状をみたい場合、テスラという磁気の力を上げることで、鮮明さを上げることができます。
また、CT検査ではうつりにくい脳の底の部分を診断できるのも、MRI検査のメリットです。例えば、危険な頭痛を引き起こす脳腫瘍はしばしば脳の底の部分にできてしまうことがあります。そのような病気を診断する際、MRI検査は大いに役立ちます。
そして、頭痛診断でMRI検査を受けるもう一つのメリットが、初期の脳梗塞を診断するのが得意なことが挙げられます。厳密にはCT検査でも初期の脳梗塞を見つけることは不可能ではありませんが、一刻も早い治療が必要となる超急性期(発症6時間以内)の脳梗塞はほとんど見つけられません。やはり、脳梗塞の診断の確実性は、MRI検査に軍配が上がります。
それはなぜかと言うと、MRI検査には脳梗塞の診断に特化した画像方法があるからです。MRI機器で画像を取る際に、拡散強調画像(DWI)という設定にすると、脳梗塞を発症して最初に起こる脳細胞のむくみ(細胞性浮腫)を鮮明に映し出します。つまり、MRI検査は脳梗塞をいち早く見つけ出すことを得意としていると言えるでしょう。
頭痛診断でMRI検査を行うことのメリットについてご説明しました。しかし、一方でMRI検査にも弱点があります。ここでは、MRI検査のデメリットを見ていきましょう。
MRI検査について調べていると、「MRI検査は脳出血の診断に向いていない」「脳出血が疑われたらCT検査を行う」などの情報を得られます。
しかし、実際には脳出血はMRI検査でも診断することはできます。それでは、なぜ急性期の脳出血ではMRI検査が不向きだと言われるのでしょうか。
それは、MRI検査にはとても時間がかかるというデメリットがあるからです。特に急性期の脳出血においては最大のデメリットとなります。
MRI検査では、おおよそ15~20分程度の時間を要し、長ければ30分ほどかかる場合があります。CTでの頭部撮影は長くても5分程度であり、最新のCT機器では1分で画像を得ることも可能です。
急性期の脳出血では、一刻も早く緊急処置を行わなければならないケースが多いです。一秒でも時間を無駄にできない状況で、診断まで20分以上を要することが多いMRI検査は不向きと言えるでしょう。これが、MRI検査は急性期の脳出血の診断には向いていないと言われる所以なのです。
突然の激しい頭痛と合わせて、「意識が悪い」「手足が動かない」などの症状が出た際には脳出血が疑われます。その場合、すぐに診断して治療を行う必要があるので、CT検査をすることになります。
一方で、危険な頭痛が起きても、緊急処置を要さない状況であれば、頭部をしっかりと検査しておいた方が良い場合もあります。その際に、MRI検査を行っておくことで、頭部の状態をしっかりと診た上で最適な治療法を選べるだけでなく、隠された病気を見つけられる可能性もあります。
ただし、MRI検査には、ペースメーカーを埋め込んでいる方は検査を受けられない、などの制限もあります。
これらのデメリットや制限を踏まえた上で、頭痛診断でMRI検査を受けるかどうか判断するようにしてください。
頭痛を治療するためには、まずなにが原因なのかを突き止めなくてはなりません。なぜなら、頭痛の「痛み」に対処し続けても、頭痛を引き起こす「原因」がそのままであれば、この先も頭痛が治ることはないからです。
そして、その頭痛の原因を突き止めるために役立つのが、MRI検査です。今回は、MRI検査で分かる頭痛を引き起こす病気とは何なのか、についてご説明します。
頭痛を診断するためにMRI検査は大いに役立ちます。MRI検査は頭痛の原因を突き止めるための方法として、一番確実だと言っても過言ではありません。
しかし、そんなMRI検査でも頭痛の原因を突き止められない可能性があります。それは、慢性頭痛です。
慢性頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などのことを言います。一般的に良く知られているこれらの頭痛ですが、実は病気が元となって起こる頭痛ではありません。元となる病巣がないので、MRI検査でははっきりと原因が分からないのです。
それでは、MRI検査で原因となる病気がわかるのはどのような頭痛なのでしょうか。次でご説明しましょう。
MRI検査で原因となる病気が明確に分かる頭痛の多くは、「危険な頭痛」と呼ばれる種類の頭痛です。危険な頭痛は、病気やその他の異常が頭部に起こることで引き起こされます。
したがって、頭部のなかをはっきりとした画像でうつしだせるMRI検査では、この「危険な頭痛」を引き起こす原因を突き止められます。
それでは、この危険な頭痛を引き起こす病気や脳内の異常とはなんなのでしょうか。以下に記します。
これらの脳内の病気および異常が、MRI検査の画像でうつしだされるものとなります。
このなかでも、脳腫瘍や脳梗塞の診断において、MRI検査は役立つとされています。MRI検査は、CT検査やレントゲン検査よりも鮮明に脳内をうつしだすことができます。また、CTではうつしだすのが難しい脳の底の部分(首に近い部分)も撮影することが可能です。
したがって、「どの部位で脳梗塞が起こっているか」「どの血管が閉塞しているか」「脳腫瘍はどの程度進行しているか」といった情報をしっかりと得られることができます。
一方で、脳出血やくも膜下出血が疑われる場合ではMRI検査を受ける可能性は低くなります。特に急性期のの脳出血においては、MRI検査では撮影に時間がかかりすぎてしまうため、ほとんどのケースでCT検査が選択されます。
厳密にはMRI検査でも初期の脳出血を見つけることはできるのですが、撮影時間が長いことがネックになってしまいます。鮮明な脳内の画像をうつしだせる変わりに時間がかかる、というイメージで良いでしょう。
反対に、過去に起きた脳出血(陳旧性脳出血)やごく少量の出血(微小出血)などの情報を得るためには、MRI検査が役に立ちます。
また、くも膜下出血の出血源となる脳動脈瘤についてはMRI検査(MRA)で発見できます。くも膜下出血発症以前に偶然脳動脈瘤を発見し、破裂する前に処置を行い事なきを得たということもまれではありません。
MRI検査を行う最大のメリットは、頭痛の原因となる病気が分かることです。それぞれの病気によって、最適な治療方法が違うため、原因を知ることで適切な治療を受けることができます。
例えば、脳腫瘍のできている部位や大きさによって、切除手術を受けるか、それとも投薬治療その他で様子をみるかなどの選択肢が出てくるでしょう。また、脳梗塞でも発生部位や血管の詰まり方によっては、手術せずに薬で症状を抑えることもできます。
また、MRI検査を受けて原因が分からない場合でも、それによって得られる情報は貴重なものです。脳内に異常がなく、慢性頭痛が頭痛の原因だということがはっきりとすれば、またそれぞれの対処法を考えることができます。
特に、片頭痛においては頭痛持ちではない人よりも脳梗塞が起こる可能性が2倍以上高いと言われています。MRI検査を受けることで、「脳梗塞は今のところ起こっていない」ということが分かるだけでも、安心できますよね。
このように、頭痛の原因を突き止めて改善することを目指すために、MRI検査はとても重要です。頭痛に悩まされている方は一度検討してみても良いのではないでしょうか。